NISAは相続できる?|名義人が亡くなったときの手続きと相続税
親や配偶者が亡くなったとき、NISA口座の株式や投資信託はどうなるのか、何をすればよいのか、税金はかかるのかを確かめたい人もいるでしょう。
NISA口座の資産は相続人のNISA口座に移せず、相続人の特定口座か一般口座で死亡日の時価により受け取ります。死亡日までの値上がり益は非課税ですが、資産は相続税の対象です。
死亡届出書の提出から移管までの流れ、取得価額と相続税評価額の違い、売却するときの税金が分かります。
- 3行要約
①NISA口座の資産は名義人の死亡で払い出し、相続人のNISA口座への移管は不可
②受け取り先は相続人の特定口座か一般口座、取得価額は死亡日の時価
③NISA内の株式・投資信託も相続税の対象で、評価は上場株式と投資信託で別
NISA口座の相続の基本ルール
NISA口座はそのままの形では相続できません。名義人が亡くなると、口座内の株式や投資信託はNISA口座から払い出され、相続人の特定口座か一般口座で受け取る形になります。
相続人が自分のNISA口座を持っていても、そこへは移せません。非課税で済むのは死亡日までの値上がり益だけで、資産そのものは相続税の対象です。
| 項目 | 名義人の死亡後の扱い | 根拠 |
| NISA口座の資産 | NISA口座から払い出される | 国税庁・租税特別措置法 |
| 受け取る口座 | 相続人の特定口座か一般口座 | 日本証券業協会 |
| 相続人のNISA口座への受け入れ | できない | 日本証券業協会 |
| 死亡日までの含み益 | 所得税はかからない | 租税特別措置法 |
| 死亡日までの含み損 | なかったものとみなされる | 租税特別措置法 |
| 死亡日以後の配当 | 非課税の対象外 | 国税庁 |
| 相続税 | ほかの遺産と同じく課税対象 | 国税庁 |
名義人が死亡したらNISA口座の資産は払い出される
NISAの名義人が亡くなった場合、NISA口座で持っていた株式や投資信託は口座の外へ出されます。国税庁は金融機関向けのQ&Aで、NISA口座に受け入れられていた上場株式等はNISA口座から払い出されると説明しています。
法律の上では、租税特別措置法第37条の14第4項が払い出しの事由として「贈与又は相続若しくは遺贈」を挙げています。死んだら口座ごと家族に引き継がれる、という仕組みにはなっていません。
出典:国税庁『NISAの基準額提供事項の提供等に関するQ&A(金融機関向け)』、e-Gov法令検索『租税特別措置法』
相続人のNISA口座には移せない
相続で受け取る株式や投資信託は、相続人のNISA口座に入れられません。日本証券業協会のQ&Aは、NISA口座に受け入れられるのは新たに購入したものと、組織再編などで取得したものだけと説明しています。
このため、被相続人のNISA口座にあった資産は、相続人の特定口座か一般口座のどちらかで受け取ります。夫婦や親子で同じ証券会社のNISA口座を使っていても扱いは変わりません。
出典:日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』
非課税になるのは死亡日までの値上がり益
租税特別措置法第37条の14第4項は、相続による払い出しがあった場合、相続が生じた時の価額でNISA口座内の譲渡があったものとみなしています。
同条第1項は、NISA口座内の譲渡による所得に所得税を課さないと定めています。このため、死亡日までの値上がり益には所得税がかかりません。
反対に、死亡日の時点で値下がりしていた分は、同条第2項により所得税の計算上なかったものとみなされます。2023年までの制度を説明した国税庁のQ&Aも、含み益は非課税、譲渡損失はなかったものとみなすと説明していました。
SBI証券も2025年のコラムで、被相続人がNISA口座で保有していた含み益は非課税と案内しています。
出典:e-Gov法令検索『租税特別措置法』、国税庁『NISA及びつみたてNISAの手続に関するQ&A』、SBI証券『もしもに備えて知っておきたい~NISA口座で相続が起きたら~』
旧NISA・つみたてNISA・新NISAの扱い
積立NISAで積み立てていた投資信託も、新NISAで買った株式も、相続での扱いは同じです。
2023年までに一般NISAやつみたてNISAで買った資産は、2024年以降のNISAとは別枠で管理されていますが、どちらもNISA口座(非課税口座)で管理されている資産として払い出しの対象になります。
租税特別措置法第37条の14第4項は、旧制度の勘定と2024年以降のつみたて投資枠・成長投資枠の勘定をまとめて払い出しの対象に挙げています。
出典:金融庁『NISAを知る』、e-Gov法令検索『租税特別措置法』
名義人が亡くなってからの手続きの流れ
NISAの名義人が亡くなったときは、NISAに固有の届出と、相続全体にかかわる期限の両方が動きます。死亡日を起点に並べると次のとおりです。
| 時点 | やること | 誰が | 根拠 |
| 死亡日 | NISAの非課税の扱いが終わる基準日 | - | 国税庁・租税特別措置法 |
| 死亡を知った日以後遅滞なく | 非課税口座開設者死亡届出書を、NISA口座のある全ての金融機関へ提出 | 相続人 | 日本証券業協会・国税庁 |
| 相続の開始を知った時から3か月以内 | 相続の承認か放棄を決める(NISAに固有の期限ではない) | 相続人 | 民法第915条 |
| 相続の開始を知った日の翌日から4か月以内 | 被相続人の準確定申告 | 相続人 | 国税庁 |
| 死亡を知った日の翌日から10か月以内 | 相続税の申告と納付 | 財産を取得した人 | 国税庁 |
| 相続税の申告期限の翌日以後3年まで | 取得費加算の特例の対象になる譲渡の期限(NISA口座から受け取った資産への適用は後述) | 相続税が課税された人 | 国税庁 |
NISA口座から相続人の口座へ移す手続きそのものには、日付で区切った期限が設けられていません。ただし死亡届出書は「遅滞なく」提出するものとされていて、遅れると配当金に税金がかかる場合があります。
金融機関で行う手続きは、おおむね次の順番で進みます。
- NISA口座のある金融機関へ名義人の死亡を連絡する
- 戸籍や印鑑登録証明書などの公的書類を提出する
- 同じ金融機関に相続人名義の口座を開く
- 金融機関から届く相続手続依頼書(移管依頼書)を返送する
- 相続人の口座へ移管され、名義変更が完了する
出典:日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』、e-Gov法令検索『民法』、国税庁『No.4205 相続税の申告と納税』
金融機関への連絡と口座の取引停止
相続手続きを申し込んで書類を出すと、故人の口座の取引が止まります。楽天証券の場合、必要事項の入力と戸籍謄本などの提出が済むと故人の口座に制限(ロック)がかかり、積立による買付や新規の取引ができなくなります。
楽天証券では、故人が口座を持っていたかどうかも相続手続きの申込前には案内されません。申込みと書類の提出をしたうえで、口座がなければその旨の連絡が届きます。
非課税口座開設者死亡届出書と提出の遅れ
NISAに固有の手続きが、非課税口座開設者死亡届出書の提出です。相続人は、名義人が死亡したことを知った日以後遅滞なく、NISA口座のある証券会社などへ提出します。根拠は租税特別措置法施行令第25条の13の5です。
提出が遅れると税金の扱いが変わります。日本証券業協会のQ&Aは、死亡日から届出書の提出までの間にNISA口座で支払われた配当金等は、さかのぼって課税されると説明しています。
金融機関を変更したことがあり、過去の年分を含めてNISA口座が複数ある場合は、すべての金融機関へ届出書を出す必要があります。
出典:日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』、e-Gov法令検索『租税特別措置法施行令』
相続手続きの必要書類
必要書類は金融機関ごとに書式や条件が違います。楽天証券とSBI証券の例を並べると次のとおりです。
| 証券会社 | 公的書類 | 会社所定の書類 |
| 楽天証券 | 戸籍(全部事項証明)または法定相続情報一覧の写し、相続人の印鑑登録証明(いずれも写しで提出) | 相続手続依頼書 |
| SBI証券(遺言書・遺産分割協議書がない場合) | 法定相続情報一覧図の写し、または被相続人の出生から死亡までと相続人全員を確認できる戸籍書類(発行後6ヵ月以内の原本)、相続人全員の印鑑証明書(発行後6ヵ月以内の原本) | SBI証券所定の相続手続き書類 |
SBI証券では、遺産分割協議書がある場合はその協議書を、遺言書がある場合は遺言書の写しなどを加えて提出します。写しで足りる会社と原本を求める会社があるため、取り寄せる前に各社の案内を確認してください。
出典:楽天証券『相続のお手続き』、SBI証券『相続に必要な書類』
同じ金融機関に相続人名義の口座が必要
NISA口座の資産を受け取るには、被相続人と同じ金融機関に相続人の口座が要ります。日本証券業協会のQ&Aは、特定口座への移管は被相続人のNISA口座がある証券会社と、相続人の特定口座がある証券会社が同一の場合にできるとしています。
特定口座で受け取るときは、相続で取得した同じ銘柄を全部その特定口座へ移します。被相続人の証券会社へ「相続上場株式等移管依頼書」を出す手続きも必要です。
出典:日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』、楽天証券『相続のお手続き』
移管にかかる期間
楽天証券は、書類を受け取ってから相続手続きが完了するまで2週間程度かかると案内しています。相続方法や保有商品によっては、さらに時間がかかる場合もあるとしています。
手続きが終わっても、故人の口座はすぐには閉じられません。配当金などが入金される場合に備えて、楽天証券が約1年後に閉鎖する扱いです。
相続したNISA資産の取得価額
NISA口座から受け取った資産は、相続人が死亡日の時価で取得したものとして扱われます。通常の課税口座からの相続とは、この点がはっきり違います。
取得価額は死亡日の時価になる
日本証券業協会のQ&Aは、相続人が受け入れる資産の取得日は相続が発生した日、取得価額は相続が発生した日の時価としています。租税特別措置法第37条の14第4項も、相続人は払い出し時の金額で同じ銘柄を取得したものとみなすと定めています。
時価の決まり方は商品で分かれます。上場株式とETFはその日の取引所の最終価格で、複数の取引所に上場している銘柄は高いほうの最終価格を使っても差し支えありません。公募株式投資信託は、その日の基準価額です。
出典:日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』、e-Gov法令検索『租税特別措置法』
通常の課税口座の相続との違い
特定口座や一般口座で持っていた資産を相続した場合、相続人は被相続人の取得価額を引き継ぎます。所得税法第60条が、限定承認を除く相続で取得した資産は相続人が引き続き所有していたものとみなすと定めているためです。
| 相続前の口座 | 相続人の取得日 | 相続人の取得価額 | 根拠 |
| NISA口座 | 相続が発生した日 | 相続が発生した日の時価 | 租税特別措置法第37条の14・日本証券業協会 |
| 特定口座・一般口座 | 被相続人の取得日を引き継ぐ | 被相続人の取得価額を引き継ぐ | 所得税法第60条 |
楽天証券も、特定口座で相続資産を受け取った場合は故人の取得価額が引き継がれていると案内しています。SBI証券のコラムは、NISAからの相続は時価、一般の相続は被相続人の取得価格の引き継ぎという違いに注意するよう呼びかけています。
出典:e-Gov法令検索『所得税法』、楽天証券『相続のお手続き』、SBI証券『もしもに備えて知っておきたい~NISA口座で相続が起きたら~』
含み益・含み損があった場合の違い
取得価額が死亡日の時価に置き換わると、死亡日までの値動きは相続人に持ち越されません。仕組みを示すための仮の数字で並べると次のとおりです。
| 被相続人の購入額 | 死亡日の時価 | 相続人の取得価額 | 死亡日までの差額の扱い |
| 100万円 | 150万円 | 150万円 | 50万円の値上がり益に所得税はかからない |
| 100万円 | 70万円 | 70万円 | 30万円の値下がり分はなかったものとみなされ、相続人に引き継がれない |
表の数字は課税の仕組みを示すための仮の値で、運用成績や将来の値動きを示すものではありません。
含み損があった場合、相続人の取得価額は値下がりした後の70万円から始まります。相続人がその後に売っても、被相続人が買った100万円との差額を損失として使うことはできません。
死亡日以後の配当・値上がりは課税
非課税が届くのは死亡日までです。
2023年までの制度の国税庁Q&Aは、名義人が亡くなった日以後にNISA口座で支払われるべき配当等には非課税措置の適用がないと説明しています。SBI証券も2025年のコラムで、亡くなった日以降に受け取った配当金は課税されると案内しています。
相続人の口座に移った後の売却益や配当は、通常の課税の対象です。上場株式等の譲渡益の税率は20.315%で、内訳は所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%です。
出典:国税庁『NISA及びつみたてNISAの手続に関するQ&A』、SBI証券『もしもに備えて知っておきたい~NISA口座で相続が起きたら~』、金融庁『NISAを利用する皆さまへ(説明資料)』
特定口座と一般口座の違い
受け取り先の口座で、売ったときの手間が変わります。楽天証券は、一般口座で受け取った場合の表示価額は受け取った時の価額で、取得価額は別途確認が必要としています。
特定口座で受け取るには、被相続人と同じ証券会社の口座で、同じ銘柄を全部受け取る条件があります。条件の詳細は「同じ金融機関に相続人名義の口座が必要」の項で扱いました。
NISA資産の相続税評価
NISA口座の資産も、相続税の計算ではほかの株式や投資信託と同じように評価されます。NISAの非課税は所得税と住民税の話で、相続税とは別の税です。
NISA内の資産も相続税の対象
相続税は、亡くなった人の財産を相続や遺贈で取得した場合にかかります。国税庁は対象となる財産の例として、現金や預貯金と並べて有価証券を挙げています。
租税特別措置法第37条の14が所得税を課さないとしているのは、NISA口座での譲渡による所得です。同条は所得税についての定めで、相続税を非課税にする定めは置かれていません。
出典:国税庁『No.4105 相続税がかかる財産』、e-Gov法令検索『租税特別措置法』
上場株式・ETF・REITの評価
上場株式は、課税時期(被相続人の死亡の日)の最終価格で評価します。ただし死亡日の最終価格が、3つの月平均額のうちいちばん低い価額を超える場合は、そのいちばん低い価額で評価します。
| 比べる価格 | 中身 |
| 死亡日の最終価格 | 上場している取引所が公表する死亡日の終値 |
| 当月の月平均額 | 死亡日が属する月の毎日の最終価格の平均 |
| 前月の月平均額 | その前月の毎日の最終価格の平均 |
| 前々月の月平均額 | その前々月の毎日の最終価格の平均 |
楽天証券では、相続手続きの申込み後に届く閲覧用IDで、死亡日の終値と同月・前月・前々月の終値平均を確認できます。
ETFのように取引所に上場している投資信託と、上場しているREITも同じ方法です。財産評価基本通達は199の注と213で、どちらも上場株式の評価の定めに準じて評価すると決めています。
出典:国税庁『No.4632 上場株式の評価』、『財産評価基本通達 第8章第6節 その他の財産』、楽天証券『相続のお手続き』
投資信託の評価
上場していない投資信託は、死亡日に解約請求か買取請求をしたとした場合に、証券会社などから支払いを受けられる価額で評価します。つみたて投資枠で積み立てる一般的な投資信託は、この方法の対象です。
具体的には、死亡日の基準価額に口数を掛けた額から、解約した場合に源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額と、信託財産留保額・解約手数料を差し引きます。死亡日の基準価額がなければ、その前でいちばん近い日の基準価額を使います。
この算式は投資信託一般の評価方法です。NISA口座内の投資信託に当てはめたときの源泉徴収相当額の扱いは、国税庁の説明ページに記載がありません。
出典:国税庁『No.4644 貸付信託・証券投資信託の評価』、『財産評価基本通達 第8章第2節 公社債』
相続税評価額と取得価額のずれ
同じ死亡日の同じ銘柄でも、相続税を計算するときの値と、相続人が売るときの取得価額は別々に決まります。上場株式では2つの値がずれることがあります。
| 区分 | 相続税評価額 | 相続人の取得価額 |
| 使い道 | 相続税の計算 | 売却したときの譲渡益の計算 |
| 上場株式・ETF | 死亡日の最終価格と3つの月平均額を比べて決まる価額 | 死亡日の取引所の最終価格 |
| 上場していない投資信託 | 死亡日に解約したとした場合に支払いを受けられる価額 | 死亡日の基準価額 |
| 根拠 | 国税庁・財産評価基本通達 | 日本証券業協会・租税特別措置法 |
月平均額のほうが低ければ、相続税は低い値で計算され、売却益は死亡日の最終価格を起点に計算されます。相続税の申告と、相続人の確定申告で使う数字を取り違えないようにしてください。
相続税がかかる目安と申告期限
相続税の基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数です。NISA口座の資産も預貯金や不動産などと合算し、課税価格の合計がこの額を超えるかで判定します。
法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、放棄がなかったものとして数えます。申告と納付の期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
個別の財産評価や申告の要否の判断は、税理士または税務署に相談してください。
出典:国税庁『No.4152 相続税の計算』、『No.4205 相続税の申告と納税』
相続したNISA資産を売却するときの税金
相続人の口座へ移った資産を売ると、通常の上場株式等と同じく申告分離課税の対象になります。いつ売るかの判断は人によって違うため、ここでは課税の仕組みだけを扱います。
売却益の計算は死亡日の時価が起点
上場株式等の譲渡益は、譲渡価額から取得費と委託手数料などを差し引いて計算します。NISA口座から受け取った資産の取得費は、死亡日の時価です。
出た譲渡益には、前の章で触れた20.315%の税率がかかります。特定口座で源泉徴収を選んでいれば税金が源泉徴収され、その譲渡による所得は申告不要にできます。
出典:国税庁タックスアンサー『株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)』、『特定口座制度』
相続税を払った場合の取得費加算の特例
相続で取得した株式などを一定期間内に売ると、納めた相続税の一部を取得費に足せる特例があります。要件は次の3つです。
- 相続や遺贈で財産を取得した人であること
- その財産を取得した人に相続税が課税されていること
- 相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
この特例は譲渡所得だけが対象で、株式等の譲渡による事業所得や雑所得には使えません。NISA口座から払い出された資産に使えるかどうかは、国税庁の説明ページに記載がありません。適用を考える場合は、確定申告の前に税務署で扱いを聞いておきましょう。
出典:国税庁『No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例』
相続人が自分のNISAで持ち直す場合
相続で受け取った資産は、相続人のNISA口座に移せません。相続人がNISA口座で同じ銘柄を持つには、自分の資金で新たに買い付ける形になります。
この買付は相続人自身の投資枠を使います。年間投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円)です。
出典:金融庁『NISAを知る』
見落としやすい税金と制度の動き
NISAの手続きと相続税のほかに、被相続人の所得税と、相続そのものを受けるかどうかの判断があります。制度の見直しの議論も、2026年10月時点では決まっていない段階です。
被相続人の準確定申告
年の途中で亡くなった人の所得税は、相続人が相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をします。これを準確定申告といいます。
NISA口座内の配当と譲渡益は非課税のため、確定申告の必要はありません。準確定申告で扱うのは、特定口座や一般口座など課税口座の側の損益です。楽天証券では、準確定申告に使う故人の譲渡損益を閲覧用IDで確認できます。
出典:国税庁『No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)』、『NISA及びつみたてNISAの手続に関するQ&A』、楽天証券『相続のお手続き』
相続放棄をした場合
民法第939条は、相続の放棄をした者は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなすと定めています。放棄をした人は、NISA口座にあった資産も受け取りません。
放棄するかどうかは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に決めます(民法第915条)。
国債NISA法案と税制改正要望の状況
NISAに国債を加え、口座内の国債に相続税の非課税の仕組みを設けることの検討を盛り込んだ法案が、2026年7月10日に参議院へ提出されました。参議院の議案情報に議決の記録はなく、成立していません。
金融庁の令和9年度税制改正要望(2026年8月)には、「上場株式等の相続税に係る見直し」と「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(取得費加算)に係る所要の措置」が、その他の要望項目として並んでいます。
どちらもNISAに固有の項目ではなく、資料に中身の説明はありません。
2026年10月時点では要望の段階で、相続税の扱いが変わることは決まっていません。
出典:参議院『議案情報』、『提出法律案』、金融庁『令和9(2027)年度 税制改正要望について』
NISAの相続のよくある質問
夫が死亡したらNISAはどうなる?
夫名義のNISA口座の資産は払い出され、妻などの相続人の特定口座か一般口座へ移ります。妻自身のNISA口座はそのまま使えますが、夫の資産をそこへ移すことはできません。
NISAのまま相続して配当金を受け取り続けられる?
できません。相続人のNISA口座には受け入れられないため、死亡日以後の配当は課税口座で受け取る形になり、非課税ではなくなります。85歳など高齢の親が亡くなった場合も扱いは同じです。
相続手続きをしないで放置するとどうなる?
移管の手続きに日付の期限はありません。ただ、死亡届出書の提出が遅れた間にNISA口座で支払われた配当金等は、さかのぼって課税されます。相続税の申告期限の10か月は、NISAの手続きが終わっていなくても進みます。
NISAの相続の落とし穴は?
押さえておきたい点は3つあります。非課税の口座は相続人に引き継げません。死亡日までの含み損も引き継げず、相続人の取得価額は死亡日の時価から始まります。そしてNISA口座の資産も相続税の対象になります。
NISAは相続税対策になる?
NISA口座の資産も、相続税の計算では口座の外にある株式や投資信託と同じ方法で評価されます。NISAで持っていたことを理由に相続税が軽くなる仕組みは、制度上設けられていません。
相続人が別の証券会社にしか口座を持っていない場合は?
被相続人と同じ金融機関に相続人名義の口座を開いて受け取ります。楽天証券は、資産の引き継ぎには相続人の楽天証券の口座が必要とし、未開設なら事前に開設するよう案内しています。
まとめ
NISA口座は名義人の死亡で払い出され、相続人のNISA口座には移せません。資産は同じ金融機関にある相続人の特定口座か一般口座で受け取り、取得価額は死亡日の時価になります。
死亡日までの値上がり益に所得税はかかりませんが、NISA口座の資産も相続税の対象です。基礎控除を超えるなら、死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告と納付をします。
手続きで最初に動くべきなのは、NISA口座のある全ての金融機関への死亡届出書の提出です。遅れた間の配当金はさかのぼって課税されるため、口座の有無を確かめながら早めに連絡してください。

