NISAで年末調整は必要?|会社員・扶養・年金受給者の確定申告
NISAで利益が出たとき、勤務先の年末調整や確定申告で何か手続きが要るのか。会社員や、扶養に入っている家族が確認したい点です。
NISA口座の配当と譲渡益は非課税のため、年末調整も確定申告も原則いりません。扶養の判定に使う合計所得金額にも含まれません。
立場別の早見表、令和8年分の扶養の所得要件、例外になる配当の受取方式と課税口座の扱いが分かります。
- 3行要約
①NISA口座の配当・譲渡益は非課税、年末調整・確定申告とも原則不要
②配当の受取方式が株式数比例配分方式以外なら、その配当は課税対象
③扶養の所得要件(令和8年分は62万円以下)の合計所得金額にNISAの利益は不算入
NISAの年末調整は原則不要
NISA口座で受け取った配当や売却益は非課税のため、年末調整で申告や精算をする対象になりません。つみたて投資枠と成長投資枠のどちらで出た利益でも、扱いは同じです。
国税庁のタックスアンサーによると、令和6年以降のNISAで取得した上場株式等は、配当等と売却による譲渡益が非課税になります。2023年までの一般NISA・つみたてNISAで買った商品も、それぞれの非課税期間の間は非課税のまま保有できます。
出典:国税庁『NISA制度』
年末調整で精算するのは給与の所得税
年末調整は、毎月の給与から源泉徴収した税額の合計と、1年間の給与総額に対して納めるべき税額との差を、年末に精算する手続きです。精算の対象は勤務先が支払う給与にかかる所得税で、証券口座で出たNISAの利益はこの計算に入りません。
国税庁は、大部分の給与所得者は年末調整で所得税額が確定し、納税も完了するため確定申告の必要はないと説明しています。NISAを使っていても、この扱いは変わりません。
出典:国税庁『令和8年分 年末調整のしかた(年末調整とは)』、『給与所得者で確定申告が必要な人』
年末調整の申告書にNISAを書く欄はない
年末調整で勤務先に出す基礎控除申告書には「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」を書く欄があります。配偶者控除等申告書にも「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額」を書く欄が設けられています。
どちらも書くのは合計所得金額の見積額で、NISA口座の利益を個別に書き込む欄はありません。NISAの配当と譲渡益は合計所得金額に含まれないため、見積額に足す必要もないでしょう。根拠は後半のH2「NISAの利益と扶養の関係」で示します。
出典:国税庁『令和8年分 年末調整のしかた(基礎控除申告書、配偶者控除等申告書等の受理と内容の確認)』
NISAに所得控除はない
NISAは配当と譲渡益を非課税にする制度で、買付けに使った金額を所得から差し引く仕組みではありません。所得税法が定める所得控除の種類にも、NISAは含まれていません。
比べられることが多いiDeCo(個人型確定拠出年金)は、加入者が払った掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象です。会社員は、掛金の証明書を年末調整で出す「給与所得者の保険料控除申告書」に添付して控除を受けられます。
| 項目 | NISA | iDeCo |
| 税制上の扱い | 配当・譲渡益が非課税 | 掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象 |
| 年末調整での手続き | なし | 保険料控除申告書に掛金の証明書を添付 |
| 確定申告での手続き | なし | 年末調整で控除しなかった場合は確定申告書の小規模企業共済等掛金控除の欄に記入 |
年末調整で手続きが発生するのはiDeCoの側だけです。勤務先に出す年末調整の書類のうち、NISAに関するものはありません。
出典:国税庁『小規模企業共済等掛金控除』、『所得控除のあらまし』
NISAの確定申告も原則不要
NISA口座で受け入れた上場株式等の配当等と譲渡益は非課税のため、確定申告をする必要はありません。利益が出た年も、売却して現金化した年も同じ扱いです。
国税庁のNISAに関するQ&A(令和元年7月)も、非課税口座内の取引について「確定申告の必要はありません」と回答しています。現行の国税庁タックスアンサー「NISA制度」でも、配当等と譲渡益を非課税とする仕組みは変わっていません。
出典:国税庁『非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置に関するQ&A』
給与以外の所得「20万円」にNISAの利益は入らない
給与を1か所から受け、その全額が源泉徴収の対象になっている会社員でも、給与と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。給与の年間収入が2,000万円を超える人も、確定申告をしなければなりません。
NISAの利益は非課税のため、もともとこの20万円の所得に数えません。混同しやすいのが課税口座で、こちらは確定申告をしないことを選んだ所得に限って20万円の合計から外れます。
| 所得の種類 | 20万円の合計に入るか | 外れる理由 |
| NISA口座の配当・譲渡益 | 入らない | 非課税 |
| 特定口座(源泉徴収あり)の譲渡益で、確定申告をしないことを選んだもの | 入らない | 申告不要を選択 |
| 上場株式等の配当等で、確定申告をしないことを選んだもの | 入らない | 申告不要を選択 |
| 預貯金の利子(源泉分離課税) | 入らない | 源泉分離課税 |
課税口座の利益をあえて申告すると、その所得は20万円の判定に加わります。NISA口座の利益には、この選択肢自体がありません。
売却益がいくらでも申告は不要
年間投資上限額のつみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円は、1年間に買える金額の上限で、利益の上限ではありません。非課税保有限度額は1,800万円で、そのうち成長投資枠で使えるのは1,200万円までです。
この範囲で買った商品から出た利益は、売却して現金化しても確定申告は不要です。国税庁のタックスアンサー「NISA制度」には、非課税になる利益の額に上限を設ける定めはありません。
出典:国税庁『NISA制度』
NISAの損失は確定申告で使えない
NISA口座で取得した上場株式等を売って出た損失は、税法上ないものとみなされます。特定口座や一般口座の利益との損益通算も、翌年以降への繰越控除もできません。
確定申告をしても、NISAの損失を税金の計算に使う方法はありません。損失が出た年も、NISA口座については申告不要という結論は変わりません。
出典:国税庁『NISA制度』
立場別の年末調整と確定申告の早見表
会社員・扶養されている家族・副業がある人・年金受給者の4つの立場で、NISAの利益が各手続きにどう関わるかを1枚にまとめました。どの立場でも、NISA口座の利益は申告や判定の対象外です。
| 立場 | 年末調整 | 確定申告 | 扶養の判定 |
| 会社員 | NISA分の申告・精算なし | NISA分は不要 | 本人の判定には関係しない |
| 扶養されている家族 | NISA分の申告なし | NISA分は不要 | 合計所得金額に含まれない |
| 副業がある人・個人事業主 | NISA分の申告なし | 申告する場合もNISA分は加えない | 合計所得金額に含まれない |
| 年金受給者 | NISA分の申告なし | NISA分は不要 | 合計所得金額に含まれない |
例外になるのは、配当を株式数比例配分方式以外で受け取った場合と、NISA以外の課税口座で利益が出た場合の2つです。詳しくは後半のH2「NISAでも税金や確定申告が関係する例外」で扱います。
会社員
年末調整で所得税の精算が終わる会社員は、NISAで利益が出ても確定申告は不要です。医療費控除などの還付を受けるために確定申告をする場合も、NISA口座の利益は所得に加えません。
扶養されている家族
専業主婦(主夫)や学生など、税の扶養に入っている家族がNISAで利益を出しても、扶養の判定に使う合計所得金額には含まれません。所得要件の金額と令和8年分の改正は、次のH2で説明します。
副業がある人・個人事業主
副業の所得が20万円を超える会社員は確定申告が必要です。個人事業主が確定申告をする場合も含め、その申告書にNISA口座の利益を加える必要はありません。
NISAの利益が、副業の所得とあわせて20万円を超えるかどうかの判定に足されることもないでしょう。
年金受給者
公的年金等の収入が400万円以下で、公的年金等以外の所得が20万円以下なら、確定申告は不要です。NISA口座の利益は非課税のため、この20万円の所得にも数えません。
ただし国税庁は、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告が必要な場合があると注意を促しています。住民税の申告の要否は、住んでいる市区町村で確認してください。
ここまでの原則に当てはめても判断がつかない個別の事情は、所轄の税務署か税理士に確認してください。
NISAの利益と扶養の関係
税の扶養に入れるかどうかは、扶養される家族の1年間の合計所得金額で決まります。NISA口座の配当と譲渡益は、この合計所得金額に含まれません。
国税庁の令和8年分の年末調整の手引きは、扶養親族などの判定に使う合計所得金額に含まれない所得として「非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等」を挙げています。NISAで利益がいくら出ても、それだけで税の扶養から外れることはありません。
出典:国税庁『令和8年分 年末調整のしかた(扶養控除等(異動)申告書の受理と内容の確認)』
扶養控除・配偶者控除の所得要件
扶養親族と控除対象配偶者の所得要件は、令和8年分から合計所得金額58万円以下が62万円以下に引き上げられました。給与だけの場合の目安は、給与収入123万円以下から136万円以下に変わります。
| 区分 | 令和7年分 | 令和8年分 |
| 扶養親族の合計所得金額 | 58万円以下 | 62万円以下 |
| 扶養親族(給与のみ)の給与収入 | 123万円以下 | 136万円以下 |
| 控除対象配偶者の合計所得金額 | 58万円以下 | 62万円以下 |
| 控除対象配偶者(給与のみ)の給与収入 | 123万円以下 | 136万円以下 |
公的年金等の雑所得だけの扶養親族は、令和8年分では公的年金等の収入が172万円以下(65歳未満は122万円以下)なら、合計所得金額が62万円以下になります。
どちらの年分でも、所得税が課されない所得は判定に使う合計所得金額に含まれません。NISAの利益は、令和7年分・令和8年分とも合計所得金額の計算に加えません。
令和8年分の年末調整で変わる点
扶養親族などの所得要件の改正は令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。2026年12月に行う令和8年分の年末調整が、新しい金額で判定する最初の年末調整です。
改正で新たに扶養の対象になった家族がいる場合は、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと書いて勤務先に出します。令和8年分の扶養控除等申告書に書く事項そのものは変わりません。
年の途中で退職した人などで、令和8年分の最後の給与が令和8年11月30日以前に支払われた場合、その年末調整には改正後の金額が適用されません。改正後の金額で控除を受けるには、確定申告などをする必要があります。
出典:国税庁『令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A(令和8年5月)』
社会保険の扶養の扱い
ここまでの説明は所得税の扶養の話です。健康保険の扶養(被扶養者)の判定でNISAの利益をどう扱うかは、加入している健康保険で確認してください。
扶養内でNISAを始めるときの資金
配偶者の収入からNISA口座に入金する場合、論点になるのは所得税の扶養ではなく、夫婦間のお金の移動です。贈与税は、個人から贈与で財産を取得したときにかかる税金で、所得税の扶養とは別の税目として判定されます。
NISAの利益と住民税
課税口座で上場株式等を売って出た譲渡益には、所得税15%と住民税5%の合わせて20%がかかります。所得税には、所得税額の2.1%の復興特別所得税も上乗せされます。
金融庁は、株式や投資信託を売った利益や配当には通常約20%の税金がかかる一方で、NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税になると説明しています。
出典:国税庁『株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)』、金融庁『NISAを知る』
課税口座との税率の違い
同じ上場株式等の譲渡益でも、どの口座で出たかで税金のかかり方と確定申告の要否が変わります。源泉徴収ありの特定口座では、所得税と復興特別所得税15.315%が源泉徴収され、ほかに住民税5%がかかります。
| 口座 | 譲渡益にかかる税 | 確定申告 |
| NISA口座 | 非課税 | 不要 |
| 特定口座(源泉徴収あり) | 所得税・復興特別所得税15.315%を源泉徴収、ほかに住民税5% | 申告不要を選べる |
| 特定口座(源泉徴収なし) | 所得税15%・住民税5%(ほかに復興特別所得税) | 申告分離課税で申告(年間取引報告書で簡便に申告できる) |
| 一般口座 | 所得税15%・住民税5%(ほかに復興特別所得税) | 申告分離課税で申告 |
令和9年1月1日以後に生じる所得からは、源泉徴収される復興特別所得税の税率が1.1%に下がり、防衛特別所得税が併せて源泉徴収されます。
出典:国税庁『特定口座制度』
NISAが会社に知られる経路
年末調整からは伝わらない
年末調整で勤務先に出す申告書に書くのは、本人や配偶者の合計所得金額の見積額です。NISAの利益はこの見積額に含まれないため、年末調整の書類からNISAの利益が勤務先に伝わることはありません。
扶養している家族のNISAについても同じです。扶養控除等申告書で扶養親族の所得を判定するときも、家族のNISAの利益は合計所得金額に加えません。
NISAでも税金や確定申告が関係する例外
配当金の受取方式が株式数比例配分方式以外の場合
NISAで非課税になる配当は、口座を開いている金融機関を経由して受け取るもの、つまり株式数比例配分方式を選んだものに限られます。発行会社から直接受け取る配当は課税扱いになります。
受取方式の選び方と変更の手順は、口座を開いている金融機関で確認してください。旧NISA・ジュニアNISAの配当も、同じ条件で判定されます。
出典:国税庁『NISA制度』
非課税口座から課税口座へ移した場合
NISA口座で取得した上場株式等を特定口座や一般口座へ移すと、移した時の価額で取得したものとみなされます。移した後に売れば、その取引は課税口座のルールで扱われます。
旧NISAの非課税期間が終わった商品を課税口座に移すケースも、この扱いに当てはまります。旧NISAの非課税期間は、一般NISAが最長5年、つみたてNISAが最長20年です。
出典:国税庁『新NISAのあらまし(令和5年11月)』、『NISA制度』
NISA以外の口座で利益が出ている場合
同じ証券会社でも、特定口座や一般口座で出た利益はNISAとは別に課税されます。源泉徴収ありの特定口座なら申告不要を選べますが、源泉徴収なしの特定口座や一般口座の譲渡益は確定申告で税額を計算します。
源泉徴収ありの特定口座でも、ほかの口座の損益と相殺したい場合や、損失の繰越控除を使いたい場合は確定申告が必要です。この申告にも、NISA口座の損益は加えられません。
出典:国税庁『特定口座制度』
よくある質問
NISAで120万円を超えたら確定申告は必要?
確定申告は不要です。120万円はつみたて投資枠で1年間に買える金額の上限で、利益が120万円を超えても申告の対象にはなりません。
つみたてNISAは年末調整の対象?
対象ではありません。2023年までのつみたてNISAは一定の投資信託の分配金と譲渡益を、現在のつみたて投資枠は取得した上場株式等の配当等と譲渡益を非課税にする制度です。年末調整で申告や精算をするものはありません。
NISAで現金化したら確定申告は必要?
売却して現金化した場合も、NISA口座の譲渡益は非課税のため確定申告はいりません。売却した商品の買付け時の金額(簿価)分の非課税枠は、翌年以降に再利用できます。
出典:金融庁『よくある質問』
NISAでいくら儲けても非課税?
非課税保有限度額1,800万円の範囲で買った商品から出た配当と譲渡益は、金額にかかわらず非課税です。上限が決まっているのは買付けの金額で、利益の額ではありません。
iDeCoとNISA、年末調整が必要なのはどっち?
年末調整で手続きをするのはiDeCoの側です。iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象で、会社員は保険料控除申告書に掛金の証明書を添付して控除を受けられます。NISAには、年末調整での手続きがありません。
確定申告の要否で迷ったときの相談先
NISA口座だけで取引しているなら、原則として確定申告は不要です。課税口座の利益や副業の所得が絡み、自分のケースが判断できない場合は、所轄の税務署か税理士に相談してください。
まとめ
NISA口座の配当と譲渡益は非課税のため、会社員の年末調整でも確定申告でも、原則として手続きはいりません。利益がいくら出ても、売却して現金化しても扱いは変わりません。
例外は、配当を株式数比例配分方式以外で受け取った場合と、特定口座・一般口座で利益が出た場合です。どちらもNISAの非課税とは別の課税ルールが当てはまります。
扶養の判定に使う合計所得金額にも、NISAの利益は入りません。令和8年分からは扶養親族と配偶者の所得要件が62万円以下になり、2026年12月の年末調整から新しい金額で判定されます。



