積立NISAの失敗例は?|売買の繰り返しと買ってはいけない投資信託
積立NISAで後悔する例には、値動きではなく、枠や買える商品のルールを知らずに使ったことが原因のものがあります。
同じ年に売って買い直しても年間投資枠は戻らず、売った枠が戻るのは翌年以降に簿価の分だけです。成長投資枠では毎月分配型や信託期間20年未満の投資信託を買えません。
失敗の型ごとの原因になるルールと、買ってはいけない投資信託を見分ける要件、始める前に確かめる7項目が分かります。
- 3行要約
①同じ年に売って買い直すと、その分だけ年間投資枠を再び消費する点に注意
②つみたて投資枠の年間投資枠は120万円で、超えた分の買付けも翌年への繰り越しも不可
③成長投資枠では毎月分配型・信託期間20年未満の投資信託が対象外
積立NISAの失敗例と原因のルール一覧
積立NISAの失敗は、値下がりで損をすることだけではありません。枠の使い方や買える商品のルールを知らずに使うと、買いたい商品を買えない、非課税の枠を使い切れないといった失敗が起きます。
この記事の「積立NISA」は、2024年からのNISAのつみたて投資枠を使った積立を指します。失敗の型と原因になるルールを一覧にすると、次のとおりです。
| 失敗の型 | 原因になるルール | 解説している章 |
| 同じ年に売って買い直し、枠が足りなくなる | 一度使った年間投資枠は、売ってもその年には再び使えない | 売買の繰り返し |
| 売った枠をすぐ使えると思っていた | 総枠が戻るのは翌年以降で、戻る金額は簿価の分だけ | 売買の繰り返し |
| つみたて投資枠でまとめて一括購入しようとした | つみたて投資枠の買付けは積立に限られる | 枠の上限と口座 |
| 年120万円を超える積立を設定した | つみたて投資枠の年間投資枠は120万円で、翌年に繰り越せない | 枠の上限と口座 |
| 2つの枠を別々の金融機関で使おうとした | つみたて投資枠と成長投資枠は1つの金融機関でしか使えない | 枠の上限と口座 |
| 特定口座の商品も非課税になると思っていた | 非課税になるのはNISA口座で新たに買った商品だけ | 枠の上限と口座 |
| 成長投資枠で毎月分配型を買おうとした | 毎月分配型や信託期間20年未満の投資信託は対象外 | 買ってはいけない投資信託 |
| 手数料と信託報酬を確かめずに買った | 成長投資枠の要件には手数料の水準が入っていない | 買ってはいけない投資信託 |
| 生活資金を入れて値下がり時に売った | 元本割れのリスクがあり、損失は他の口座と損益通算できない | 生活資金 |
| 配当金を発行会社から直接受け取った | 株式数比例配分方式を選ばないと配当は課税される | ― |
表の10の型は、どれもNISAの制度で決まっているルールが原因です。口座を開く金融機関がどこでも同じように起きるため、始める前に知っておけば避けやすくなります。
出典:金融庁『NISAを知る』、日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』、国税庁タックスアンサー『NISA制度』
売買の繰り返しで枠が足りなくなる失敗
値動きを見て売り、別の商品に買い替える売買を同じ年に繰り返すと、その年の年間投資枠が先に尽きて、予定していた積立や買付けができなくなります。
原因は、年間投資枠と非課税保有限度額(総枠)で、枠が戻るルールが違うことにあります。
年間投資枠は売却しても当年中は戻らない
年間投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、合計360万円です。一度使った年間投資枠は、その商品を売っても、その年のうちに再び使うことはできません。
たとえば、つみたて投資枠で60万円分を買い、同じ年に売ったとします。売って空いたように見える60万円分を、その年の買い直しに使うことはできない仕組みです。
成長投資枠で1年の流れを追うと、次のようになります。
| 時期 | 取引 | その年に成長投資枠で買える残り |
| 1月 | 240万円分を買う | 0円 |
| 6月 | 240万円分をすべて売る | 0円(売っても戻らない) |
| 翌年 | ― | 240万円(総枠も簿価の240万円分が戻る) |
成長投資枠でも同じルールで、売った商品を買い戻すと、買い戻した金額の分だけその年の年間投資枠を使います。値動きのたびに売買を繰り返すほど、年間投資枠は早く減っていくでしょう。
日本証券業協会は、合理性なく短期間に買い替えを繰り返す短期の回転売買について、NISA制度の趣旨を逸脱するおそれがあると示しています。
売った商品の分の枠は、翌年以降に戻ります。戻るのは非課税保有限度額(総枠)で、金額は売った値段ではなく、買ったときの金額(簿価)の分だけです。
戻った枠を使う場合も、翌年の年間投資枠に上乗せされるわけではありません。翌年に使えるのは、つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円の範囲までです。
売った年のうちに総枠を戻す「当年中の復活」は、金融庁が2026年8月の令和9年度税制改正要望に挙げた段階で、2026年10月1日時点では成立していません。
出典:金融庁『NISAを知る』、『令和9(2027)年度税制改正要望について』、日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』
旧制度の商品を売っても総枠は戻らない
2023年までのつみたてNISAで買った商品は、2024年からのNISAとは別の外枠で管理されます。この商品を売っても、2024年からのNISAの非課税保有限度額は戻りません。
非課税期間が終わった商品を、2024年からのNISAへ移すロールオーバーもできません。旧制度の商品を売って新しいNISAで買い直すと、買い直した金額の分だけ新しい年間投資枠を使います。
出典:金融庁『NISAを利用する皆さまへ』、『よくある質問』、日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』
枠の上限と口座のルールで起きる失敗
枠の上限と口座のルールは、積立を設定するときと口座を開くときに確かめる項目です。設定や口座選びを誤ると、予定していた金額を非課税で買えなくなります。
つみたて投資枠と成長投資枠を、別々の金融機関で使うことはできません。2つの枠は1つの金融機関で使うため、口座を開く金融機関を選んだ時点で、両方の枠の買付け先が決まります。
金融機関は年単位で変更できるものの、変更前の金融機関で商品を売った場合、その枠を再利用できるのは変更後の金融機関のNISA口座だけという点に注意してください。
出典:金融庁『よくある質問』、『NISAを利用する皆さまへ』
年間120万円を超える積立設定
つみたて投資枠の年間投資枠は120万円で、毎月10万円の積立を12か月続けると上限に達します。
ボーナス月の増額などで年間の合計が120万円を超える設定にしていても、超えた分をつみたて投資枠で買うことはできません。
使わなかった年間投資枠を、翌年に繰り越すこともできません。年の途中から積立を始めた年も、残った枠は翌年に持ち越せない点に注意してください。
つみたて投資枠で買えるのは、積立による買付けだけです。まとまった資金を一度に投資する一括購入は、成長投資枠で行う決まりです。
楽天証券には、積立注文が年間投資枠を超える場合に、注文金額を枠に収まる額へ自動で減らす「ピッタリ注文」があります。
楽天証券では、年間投資枠の超過などで積立買付が止まった場合、積立買付の資金は預り金に入ります。
出典:日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』、楽天証券『積立設定 操作ガイド(NISAつみたて投資枠)』、『選べる引落し方法』
課税口座の保有分は非課税にならない
特定口座や一般口座ですでに持っている株式や投資信託は、NISA口座を開いても非課税にはなりません。
非課税になるのは、NISA口座を開いた後に新たに投資し、NISA口座に受け入れた商品の配当金や売買益です。
課税口座の商品をNISAで持ち直すには、課税口座で売ってからNISA口座で新たに買うことになります。課税口座で売って得た利益には、通常どおり約20%の税金がかかります。
出典:日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』、金融庁『NISAを知る』
NISAで買ってはいけない投資信託の特徴
この記事では銘柄名を挙げず、NISAの制度で対象から外れる投資信託の要件と、どの商品にも共通する費用の確かめ方で「買ってはいけない」を説明します。
2つの枠で対象から外れる主な商品は、次のとおりです。
| 枠 | 対象から外れる主な商品 |
| つみたて投資枠 | 上場株式、上場REIT、毎月分配型の投資信託、公社債、公社債投資信託など。信託期間が20年未満のものや、指数・手数料の水準などの要件を満たさないものも対象外 |
| 成長投資枠 | 整理銘柄・監理銘柄の株式、信託期間20年未満・毎月分配型の投資信託、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託等 |
| 両方の枠 | 預金、国債や社債そのもの、公社債投資信託 |
公社債投資信託は、つみたて投資枠と成長投資枠のどちらでも買えません。債券に投資する商品を選ぶときは、商品の種類まで確かめてください。
純資産額や運用実績で線を引く公的な要件は、つみたて投資枠のうち指数に連動しない投資信託にだけあります。純資産額50億円以上、運用実績5年以上、信託期間の3分の2以上で資金流入超という3つです。
成長投資枠の除外要件には、純資産額や運用実績の基準は入っていません。
出典:日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』、金融庁『NISAを知る』、『NISAを利用する皆さまへ』
成長投資枠で買えない投資信託
成長投資枠は、上場株式や公募株式投資信託などを買える枠です。ただし信託期間20年未満の投資信託、毎月分配型の投資信託、デリバティブ取引を用いた一定の投資信託等は対象から外れています。
毎月分配型を買うつもりで口座を開いても、成長投資枠では買えません。投資信託の分配金は、預貯金の利息とは性質が違います。分配金は受益者自身の損益にかかわらず、投資信託に収益等があれば支払われるものです。
分配金のうち利益にあたる部分は普通分配金、投資した元本の払い戻しにあたる部分は元本払戻金(特別分配金)と呼ばれます。
株式でも、上場廃止が決まっている整理銘柄と、上場廃止基準に該当するおそれがある監理銘柄は、成長投資枠で買えません。
出典:金融庁『NISAを知る』、『NISAを利用する皆さまへ』
対象商品一覧で確かめる方法
つみたて投資枠で買える投資信託は、金融庁の「つみたて投資枠対象商品届出一覧」で確かめられます。一覧は運用会社別と対象資産別の2種類で、2026年10月1日時点の最終更新日は2026年9月30日です。
成長投資枠で買える投資信託の一覧は、資産運用業協会がホームページで公表しています。買う前に、商品名がそれぞれの一覧に入っているかを確かめてください。
つみたて投資枠の対象は、2026年4月1日に広がりました。指定指数が2つ追加され、指数に連動しない投資信託の要件は「主に株式に投資するもの」から「主に株式又は公社債に投資するもの」に変わっています。
出典:金融庁『つみたて投資枠対象商品』、『「非課税口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に関する基準」の一部改正について』
購入時手数料と信託報酬の確認
投資信託の主な費用は、買うときの購入時手数料、持っている間の信託報酬、売るときの信託財産留保額の3つです。購入時手数料は購入時に販売会社に支払う手数料で、信託財産留保額は解約の際に換金の費用として信託財産に留保するお金を指します。
つみたて投資枠の対象商品は販売手数料が0%で、解約手数料や口座管理料もゼロである必要があります。
成長投資枠の除外要件は、信託期間・分配の頻度・デリバティブ取引の使い方に関するもので、手数料の水準は要件に入っていません。
そのため成長投資枠で投資信託を買うときは、購入時手数料と信託報酬の金額を商品ごとに確かめる必要があります。
なお、購入時手数料は年間投資枠の利用金額に含まれません。年間投資枠は、購入時の単価に数量を掛けた取得対価を年間で合計した金額で計算します。
出典:金融庁『NISAを利用する皆さまへ』、日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』
信託報酬は保有中ずっとかかる費用
信託報酬は、投資信託を持っている間、保有額に応じて日々支払う費用です。売るまで差し引かれ続けるため、率の小さな差も保有期間が長いほど金額の差になります。
保有額が100万円のまま変わらないと仮定した場合の信託報酬は、次のとおりです。運用の利回りは計算に入れていません。
| 信託報酬(年率) | 1年間の信託報酬 | 10年間の合計 |
| 0.1% | 1,000円 | 1万円 |
| 1.5% | 1万5,000円 | 15万円 |
年率の差は1.4%ですが、保有額100万円では1年で1万4,000円、10年で14万円の差になります。実際の負担額は、値動きで保有額が変わる分だけ増減します。
購入前に交付目論見書で見る項目
投資信託の中身と費用は、交付目論見書で確かめられます。金融庁は、目論見書で確認すべきポイントとして次の5つを挙げています。
- 目的:何に投資し、どのような運用成果を目指すかを確かめます。信託期間もここで分かります。
- リスク:価格変動・金利変動・為替変動など、基準価額に影響するリスクを確かめてください。
- 分配金と決算:分配の頻度と決算日が分かるので、毎月分配型かどうかを見分けられます。
- 運用状況:基準価額・純資産総額・分配の推移から、運用の状況と資産規模をつかめるでしょう。
- 費用:どのタイミングで、どのような費用や税金がどれくらいかかるかを確かめます。
毎月分配型かどうかと信託期間は、成長投資枠の対象外かどうかに直結する項目です。購入時手数料と信託報酬は、費用の欄で金額まで確かめておきましょう。
生活資金を入れて値下がり時に売る失敗
NISA口座で買った商品は、NISA口座で持っている限り、いつでも非課税で売れます。一方で、有価証券への投資は預金と違い、元本割れのリスクを伴います。
数年以内に使う予定の生活資金まで入れていると、使う時期に値下がりしていても売るしかありません。その場合は、値下がりした分の損失を確定させることになります。
金融庁は、NISAの利用者に、ライフプランを踏まえてどのような資金ニーズが発生するかをよく考えることが重要だとしています。投資に回すお金と、使う予定のあるお金を先に分けておきましょう。
金融庁は、NISAについて金融機関が取り組むべき事項として、顧客ニーズや資金の性格、リスク許容度などの確認を挙げています。
出典:日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』、金融庁『NISAを利用する皆さまへ』
損切りを繰り返して後悔する型
値下がりのたびに売り、値上がりを見て買い直す流れを繰り返すと、買い直すたびにその年の年間投資枠を使います。売った分の枠が戻るのは翌年以降なので、同じ年の買い直しが重なるほど枠は早く減ります。
NISA口座で出た損失は、他の口座の利益と損益通算できず、翌年以降への繰越控除もできません。課税口座のように損失を税金の計算に生かせない点を、売る前に確かめておいてください。
始める前の失敗回避チェックリスト
始める前と売る前に、次の7項目を確かめておくと、この記事で挙げた失敗の型を避けやすくなります。
| 確かめること | 当てはまると起きる失敗 |
| 同じ年に売って買い直す予定がある | 買い直した分だけ年間投資枠を使い、枠が足りなくなる |
| 年間の積立額の合計が120万円を超えている | 超えた分はつみたて投資枠で買えない |
| 2つの枠を別々の金融機関で使うつもり | 2つの枠は1つの金融機関でしか使えない |
| 成長投資枠で毎月分配型・信託期間20年未満の投資信託を買うつもり | 成長投資枠の対象外で買えない |
| 購入時手数料と信託報酬を確かめていない | 保有している間、費用が差し引かれ続ける |
| つみたて投資枠でまとめて買うつもり | つみたて投資枠は積立の買付けしか受け入れない |
| 数年以内に使うお金を入れている | 値下がりした時期に売る必要が出る |
1つでも当てはまる項目があれば、口座を開く前か、売る前に設定や資金の配分を見直してください。
確かめる時期は、口座を開く前に金融機関、積立を設定する前に金額と商品、売る前に年間投資枠の残りという順番です。
よくある質問
積立NISAで失敗する確率は?
将来の値動きは予測できず、NISAの制度も運用成果を保証していません。金融庁の資料も、将来の運用成果を予測・保証するものではないとしています。
制度のルールが原因の失敗は、チェックリストの7項目を確かめておけば事前に避けやすくなります。
失敗したらやり直せる?
売った商品の簿価の分は翌年以降に総枠として戻るため、非課税で持てる総額が減ったままになるわけではありません。ただし戻った枠を使えるのは、毎年の年間投資枠の範囲内です。
口座を開いた金融機関を変える場合は、年単位で変更できます。
出典:金融庁『よくある質問』
積立NISAとつみたて投資枠は同じもの?
2024年からのNISAで、つみたてNISAはつみたて投資枠に、一般NISAは成長投資枠に引き継がれました。2018年に始まったつみたてNISAの後継にあたるのが、つみたて投資枠です。
2023年までに旧つみたてNISAで買った商品は新しいNISAの外枠で管理され、購入時から20年間、非課税で持ち続けられます。
毎月分配型の投資信託はNISAで買える?
成長投資枠では対象外で、つみたて投資枠でも毎月分配型でないことが対象商品の要件です。NISA口座では、2つの枠とも毎月分配型の投資信託は買えません。
出典:日本証券業協会『2024年以降のNISAに関するQ&A』
まとめ
積立NISAの失敗は、枠のルール、商品の要件と費用、投資に回すお金の性質の3つに分けられます。同じ年の売買で年間投資枠は戻らず、売った枠が戻るのは翌年以降に簿価の分だけです。
成長投資枠では毎月分配型や信託期間20年未満の投資信託を買えず、購入時手数料と信託報酬は商品ごとに確かめる必要があります。使う予定のあるお金を入れないことも、値下がり時に売らずに済む条件になります。
始める前にチェックリストの7項目を確かめ、積立の支払い方法まで決めておきましょう。クレジットカードで積み立てる場合のカードの選び方は、クレカ積立のおすすめカードを比較した記事で確認できます。


